ニセコ町でご夫婦で酪農を営む鈴木さん。
東京都出身で海外生活の経験もある鈴木さんですが、新規就農で牧場を経営しています。
現在は牛を育て、自宅工房ではチーズ作りをしながら、教育旅行の体験を受け入れている鈴木さんにお話を伺いました。
なぜ新規就農をして牧場経営をしようと思ったのですか?
違う牧場で従業員として働いていく中で、自分の牛作りがしたいと思ったことがきっかけで新規就農して牧場を始めようと思いました。
とにかく牛が健康で健やかに、長く生きていけれるように、そこに力を入れて経営をしています。
少しでも牛のストレスを軽くして、牛と自分との絆を作れていけたら良いなと思っています。
現在の経営で苦労していることはどんなことですか?
少頭数で経営しているので、数字としてはとてもシビアです。
酪農は牛を多く飼えば飼うほど売り上げが上がって利益も上がるという産業ですが、うちでは10頭しかいないので、一般的な酪農と180度違う経営をしています。
そのため、少頭数でいかに利益を上げていくかという点には苦労していますし、改善してもっと上を目指していきたいと思っています。
今後、酪農経営を持続させていくにはどのようなことが必要で、どのような工夫をしていますか?
僕たち第一次産業は消費者があってこそ成り立っている産業なので、少しずつでも酪農の現場を知ってもらい、牛を知ってもらい、牛乳を知ってもらえるよう発信していくことが大切だと思っています。
また、酪農経営を持続させていくためには、牛を少しでも長く飼っていくことがこれからの酪農の世界では大切になってくると思っています。
世界でもアニマルウェルフェアといって「牛は家畜だけれども牛にストレスを与えず飼っていこう」という考えがあって、それもどんどんと日本に入ってくると思います。
そういったところで何が大切なのかを常に考えて、ぶれずにやっていくことも大切だと思っています。
体験を通じて、生徒さんに伝えたいことや感じて欲しいことはありますか?
多くの方にとって、牧場が近くになくても乳製品や牛乳てものすごく身近な食料品だと思います。
でも、それを生産しているのは遥か遠くにある牧場で起きていることで、牧場や牛を見たこともないという生徒さんもたくさんいるんですよね。
そのため、ここに体験に来てもらって初めて牛の大きさやあたたかさを感じたり、「牛のまつ毛ってこんなに長いんだ!」という気づきがあったり、牛乳って生き物から生産されているんだよっていうことを再認識してもらいたいという思いがあります。
また、体験の中でも良いことばかりを伝えるのではなくて、生命の話にも触れていきます。
牛は産業動物なので、もしも病気などで牛が立てなくなったりした場合、1週間ほど様子を見ながら獣医さんと相談して、その牛の最期の選択することもあるということもお話ししています。
命の尊さを伝えるために、「いただきます」や「ごちそうさま」という気持ちが大切なんだということも改めて伝えたいと思っています。
体験をやっていて良かったと思うことはありますか?
体験をやっていて良かったことは、こちらもとてもパワーをもらえることですね。
みなさんがくるということで、自分たちも酪農や牛乳の最新情報を勉強しますし、若い生徒さんからものすごくパワーをもらえています。
体験の日程がわかると、とてもワクワクして待っているんですよ。
体験の後に生徒さんがみんな「来て良かった〜」と言いながら目をキラキラさせて帰っていくのが毎回とても嬉しく思っています。
これから体験に来る生徒さんに向けて伝えたいことはありますか?
うちに来ることに関して言えば、身構えずに素の自分で来てほしいなと思います。
酪農のことについてあえて勉強してくるというよりは、ここに来て各々の素を出してほしいと思っています。
ふれあい体験や搾乳体験はどこでもできると思うのですが、ここでの体験は唯一無二だと思っていますし、今後も他で経験できることはないと思うんです。
そのため、思う存分わからないことは質問してほしいし、牛や酪農のことをどんどん質問してほしいですし、色々なことを体験してほしいと思っています。
お話を伺っていると、色々な土地での生活経験がある鈴木さんだからこそ伝えられる熱い想いが伝わってきます。
少頭数経営だからこそできることを常に模索していて、これからの活躍がますます期待されます。
全く違う都会の生活と牧場の生活ですが、実は見えない部分で繋っていてお互いに支え合っているというんだということをぜひ現地で体感してください。