ニセコ町でダチョウ牧場を営む氏家さんの紹介です。
現在はカフェを経営したり、修学旅行生を受け入れながら、ダチョウや牛を飼育し牧場経営を営んでいる氏家さんに、お話を伺いました。

なぜダチョウ牧場を経営しようと思ったのですか?
元々は私のおじいちゃんがダチョウを飼い始めたんです。
ダチョウは当時「これからの畜産だ」と言われていたので、日本中でたくさんのダチョウ牧場があったんですが、ダチョウ牧場は減っていったんですね。
多くの牧場が辞めていく中、この牧場も採算が取れている状態ではありませんでした。
そんな中、牧場をやろうと思ったのは、景色が綺麗で、来てくれるお客さんの憩いの場みたいな場所をなんとか残せないかなと思い始めました。
当時はダチョウ産業は鳴かず飛ばずの状態だったので、参考にできるものもない反面、自分の好きなようにじゃないですが、お客様が楽しめてかつ、牧場が続けていくにはどうやったらいいのかなと思って現在も色々とやっているところです。

Q.現在の酪農経営で大変なことはどんなことですか?
贅沢な話かもしれませんが、商品などが人気になると大変なんだなということを感じています。
色々な人達が来てくれるようになると、いい人たちばかりではない場合もあって、そういった方達にどのように伝えていったらいいのかと考えます。
今までの良かったところにや、今までお客さんが来て感じてくれた価値を残しながら、注意だとか締めるところはやっぱり締めないといけないよな、というところが苦労したところでもあります。
いくらでも「どうぞいらっしゃいませ」といった感じで、当時は必要だったのでメディアさんにも出させてもらったんですけど、おこがましいというか、そんなこと言える立場ではなかったんですが、現在は出ないようにしたり、お断りしなければいけない状況なっているのが現在の悩みでもあります。
販売店さんにも色々と作らせてもらって、納めさせてもらって、販売してもらってとやっていますが、どうしてもキャパオーバーしてしまったりして、「どこまで」というのが非常に難しいところだなと感じています。

今後、牧場経営を持続させていくにはどのようなことが必要で、どのような工夫をされていますか?
欲張らないというか、自分に使う時間とか、家族に費やす時間などを大切にしたいですね。
つい前のめりになってしまい、そうなるとバランスが崩れてしまうので、どうやってバランスを取っていったらいいのかなというのは考えていますね。
また、物価高騰などの影響ですが、おかげさまで色々な産業が発展してきているので、色々なお客さんから、おからやビールかすなど、色々なものをいただく機会が増えているんです。
さらに今年は酒粕もできるだけ受け入れたいと思っています。
飼料価格などが国際情勢でどんどんと上がっていく中で、うちはそれほどダメージを受けずに経営できています。
あと、規模を拡大させようと思っていないのもありますが、地域の中でできることを考えると頭打ちになってしまうこともあるんです。
ただ、うちはそういったこともないよう、どこに利益の種が眠っているのかしっかりと押さえていきたいんです。
そこができてくると、ここ数年ずっと同じ規模で経営していても、売り上げが上がっていくような感じなので、そこはしたたかにやっていきたいと思っています。
Q.体験を通じて、生徒さんに伝えたいことや感じてほしいことはありますか?
短い時間しか滞在できないので、だからこそ北海道らしい空気を感じたり景色を見て、いいなあとか、色々と感じてもらうことですかね。
私がよく命の大切さとか、食についてお話させていただくことがありますが、そこはどうしても伝わり切らないこともあると思うんです。
そのため、まずは自然の中で楽しむことや自然の良さを感じてもらって、そこから自然に関心を持つきっかけになれば良いなと思っています。

Q. 体験をやっていて良かったと思うことはありますか?
私は動物を飼って命をいただくというのを自然にやっていたことなんですが、その中で失ったものもたくさんあったんです。
ですが、体験を通してたくさんの生徒さんと関わらせていただいて、一人一人の生徒さんがいつも新しい発見をしていい表情をしているのを見て、自分自身再発見させてもらっています。
私もまだ学ぶことがあるのに目が曇ってきてしまうんですが、純粋な曇りのない純真な目で感じている姿を見て、私が忘れていた感性を思い出させてもらってありがたいなと感じています。
Q. これから体験に来る生徒さんに向けて伝えたいことはありますか?
初めてダチョウを見る時は怖いと感じるかもしれませんが、それは当然ですし、その感覚はとても大事だと思っています。
また、北海道はいいところだし、あたたかい人がたくさん迎えてくれると思うので、体だけを大切に、健康な状態で北海道に来て、北海道の空気や自然を存分に感じてもらえたら良いなと思います。

常にダチョウへを観察しながら、ダチョウの一生を見守り管理する氏家さんは、ダチョウとの信頼関係もバッチリで、遠くにいるダチョウを呼び寄せてコミュニケーションを取れている姿はとても感動的でした。
羊蹄山やニセコ連邦を望み絶景が広がる牧場で、普段の生活では体験できない空気や景色を見ながら多くのことを感じてください。